労働災害(以下、労災)への対応は、会社の健全な成長と従業員の安全を守る上で欠かせない要素です。
しかし実際には「労災隠し」と呼ばれる行為が散見されます。
今回は、労災隠しがもたらすリスクと、その対応策について詳しく解説します。
労災隠しとは
労災隠しとは、労働者が仕事中に負傷や病気をした際、会社がその事実を隠し、労働災害として適切な手続きを取らないことを指します。
例えば、労災保険に加入していないなどの理由で、作業中に発生した怪我を自己責任として処理するケースや、社内での軽い治療にとどめたりするケースがこれにあたります。
その他、労働災害の届け出は行うものの、実際には事故防止措置の取られていなかった事故現場について会社としては必要な安全措置を講じていたかのような虚偽の内容を届け出るケースもあります。
これらの労災隠しは、「労働基準法」や「労働安全衛生法」に反する行為です。
労働基準法第75条には、「労働者が業務中に負傷した場合、会社はその療養費を支給する義務がある」と明記されています。
また、労働安全衛生法は、会社に対して従業員が安全に働ける環境を提供する義務を課しており、違反が発覚した場合には罰則が科される可能性があります。
労災隠しが行われたことによる労働者のデメリット
労災が隠された場合、労働者は適切な治療や補償を受けられないまま、健康を害しながら働き続けることを強いられることがあります。
たとえば、建設現場での転倒事故で骨折した労働者が、労災として扱われず、個人の健康保険で治療を受けざるを得なくなったケースが報告されています。
このような場合、労災保険を活用できないため、治療費などの自己負担が増えることに加え、治療内容にも制限がかかり、労働者本人が希望した治療を受けることができないこともあります。
さらに、労災保険からは治療関係の給付だけではなく、怪我で働けない場合にもらえる休業補償給付や、傷病補償給付、後遺障害が残った場合の障害補償給付等の給付を受けることができますが、労災申請を行えなかったときはこれらの給付が受けられなくなる結果、生活苦に陥ることが考えられます。
加えて、会社から十分な治療やリハビリ期間が与えられないケースもあります。
労災隠しによる企業側のリスクと影響
また、労災隠しが行われると、会社内部での事故情報が正確に把握されないため、今後の防止策が取られにくくなり、他の労働者にも同様のリスクが及ぶ可能性も高まります。
これにより、安全な労働環境が整備されないまま、労働者は安心して働けない状況が続くことになります。
労災隠しを疑った際の具体的な対策
会社による労災隠しが疑われる場合、まずは適切な対応を取るための手続きや方法について理解することが重要です。
以下の手順は、労災隠しを疑った際にとるべき基本的な対策です。
事実確認
労災が隠されている場合、その事実を確認することが第一歩です。
例えば、怪我をして受診した際に医師から「労災申請を行っているか」を確認された場合などには、会社に労災の申請状況を確認するようにしましょう。
また、一部の医療機関は、都道府県から労災保険指定医療機関の指定を受けています。
これらの医療機関では、労働者の治療について費用負担が必要なくなることに加え、労基署での手続きも簡単になりますので、利用を検討した方がよいでしょう。
労働基準監督署への相談
会社が労災申請に応じない場合や、労災隠しが疑われる場合には、労働基準監督署に相談することができます。
労働基準監督署は、企業が労働基準法や安全衛生法を遵守しているかを監督する機関であり、労働者が労災保険の適用を受けられるよう支援してくれます。
労働基準監督署は国の公的期間ですので、相談料などはかかりません。
また、会社が労災保険に加入していない場合でも労災保険に加入している場合と同様の保証を受けることができることがあります。
弁護士への相談
さらに、労災隠しが疑われ、労基署への相談だけでは解決が難しい場合には、弁護士にご相談のうえ対処することが推奨されます。
弁護士法人リブラ共同法律事務所では、弁護士による企業との交渉や労基署への労災申請手続、症状固定後の後遺障害認定のサポートを行います。
労災隠しに対して法的に適切に、そして迅速に対応することで必要な給付を受けて治療に専念できることにつながりますので、お気軽にご相談ください。